体系的・継続的なスキルトレーニング

2016年06月19日

「読み取る力」「伝える力」などの学習技術は、体系的・継続的なトレーニングの上に築かれます。
学校で学んだ知識は一度身につけてもテストが過ぎれば「忘却の彼方に」といったケースもありますが、技術は一度身につけると失うことはありません。
鉄棒の逆上がり、自転車や車の運転、スケートや水泳などの技術を想像してください。歳を追うごとに忘れ、失うのではなく、一度身につけた技術は更に向上する可能性を秘めています。

 

「読み取る力」「伝える力」を学年相応に基礎的・集中的トレーニングが実践されているアメリカの事例(表1)をご覧ください。
大学での学びに向けたカリキュラム、スキルトレーニングが、小学低学年より高校卒業まで途切れることなく組まれています。
アメリカでは、「読み取る力」「伝える力」は知識として学ぶものではなく、技術としてトレーニングをするものであると捉えています。
尚、下の表で紹介されている「ショーアンドテル」とは、子どもが自宅から好きなものを持ってきて、クラスの皆の前で、それを見せながら説明することです。自分の好きなものを相手によく知ってもらうために、伝えたいことをまとめ、人前でわかりやすく話すといった力が身につく学習活動です。
アメリカの学校でのスキルトレーニング

レトリック(Rhetoric) 

2016年06月6日

レトリックは、紀元前5世紀半ば頃、シチリア島のシラクーサで誕生したと言われています。
民主制を樹立したシラクーサの人々は、僭主に強奪された権利や私有財産を取り戻すために数多くの民事訴訟を起こしました。
僭主の長期にわたる占有で、所有権を示す「文書」や「証拠資料」はほとんどなく、裁判では「説得力」のある議論をする人が有利でした。
そこで、人を説得するための技術が必要とされ、話し言葉による発話の技術であるレトリックが誕生したのです。
「弁論術」と呼ばれるものです。
レトリックは、ギリシャへ、ギリシャがローマに制圧されるとローマ圏へと広がり隆盛を極めました。
科学が発達してくると、人々の考えは、科学が真実に近づく方法だとの考えになってきて、文を彩る(文彩)レトリックは軽んじられてきました。科学者が示す方が、説得力があるからです。科学の実験は、誰が再試行しても同じ結果を得ることができて、信頼に値し信用もされるからです。
レトリックは、言葉を有効に使って、うまく美しく表現する修辞的説得だけではありません。
仮説や命題が真である理由を明らかにする論証的説得もあります。
文彩(修辞)と議論法(論証)です。
文彩には比喩、議論法には演繹法や帰納法があります。これらを活用すると、自分の考えを相手にわかりやすく説明するために効果的で、説得力を持って伝えることができます。
レトリックを実践して、言語表現の幅を広げていきましょう。

学習技術

2016年06月5日

学ぶために、そして、学習行動をしていく中で獲得するスキルが学習技術です。
自分がどういった種類の学びをしたいかで、必要とされる学習技術は変わってきます。
答えのある「問い」に取り組む場合と、答えのない「問い」に取り組む場合では、違った学習技術が必要です。
学びの目的を設定すること、その目的を遂行するために必要な学習技術を知ること、そして学習技術を自分のものにすることが、学びを探求するのに役立ちます。

 

日本では、日本の大学入試制度に合わせた学習技術を身につけてきました。おもに、正確に速く正解を出す学習技術です。「記憶して再生する力」です。2020年度からの大学入試制度では、「思考力」も、併せて問われるものに変わろうとしています。これは、大学入学後、自分で問いを立て、答えを導くために、自ら学問に主体的に取り組む力を身につけているかどうかを見極めるためだからです。
「記憶して再生する力」に加えて「考える力」を学びの目的として設定することが大切です。

 

新たに設定した目的を遂行するためには、従来の学習技術だけでは不十分です。
「考える力」を培う学習技術が必要になります。それには、「分析力」「評価力」「創造力」が不可欠です。
クリティカルシンキングやクリエイティブシンキングなどの思考スキルの修練が中軸となります。
物事を分類して整理する、分類したものを組み合わせて新たなものを生み出す、そして新たなものの価値を判断する力が、「考える力」を養うために必要な学習技術だと知ることです。

 

学習技術を自分のものにするには、これまでも度々ブログで取り上げてきましたが、トレーニングを積むことです。
学習技術を知識としてとどめるのではなく、反復して数こなし、経験値をあげていきます。
「継続は力なり」(Practice makes perfect)の名言が示すように、トレーニングを続けることで、学習技術は向上します。

 

フィギュアスケートの羽生結弦選手の活躍には、練習拠点、コーチや振付師の存在が欠かせないように、学習技術の獲得にも、環境や指導者の果たす役割は多大です。
自分に必要な学習技術を獲得して、学びを探求しましょう。

面接

2016年06月4日

入学や就職試験での面接には、どのような心構え、準備をして臨めば良い結果が得られるのでしょうか。
自分自身を知ること、問答のトレーニングを数こなしておくこと、身だしなみを整えておくことが、面接成功への鍵となります。

 

まず、自分自身を知ることですが、面接本番までに時間の猶予があります。
志願理由書(ブログ5/22)でも記したように、自分自身を見つめ、周囲の意見も聞いて、自分がどういった人間であるかの自己分析をやり遂げておきます。
そうすることで、面接官のどんな質問にも、自分の言葉で答えることができるからです。
面接の模範解答にふりまわされないようにしましょう。
金太郎飴のような一律のものではなく、多様な人材を求めているので、正直に自分を表現しましょう。
面接官は、自分自身を知っている人を求めています。

 

次に、問答のトレーニングを数こなしておくことです。
質問を想定して練習しておきます。
本番までに、何度も練習をして、会話のキャッチボールができるようにしておきましょう。
単語ではなく、文で言葉のやり取りができるようにしておきましょう。
トレーニングを通じて、面接に臨む気持ちを準備万端にします。そうすれば、勢いもつきます。
それが、本番での自信につながっていきます。

 

最後に、身だしなみを整えておきます。
面接での第一印象は、合否の大切な判断材料です。
服装、髪型、姿勢など、だれでも確実に準備できる、常識的なことはきちんとしておきます。

 

備えあれば患いなしです。準備する時間があります。志願理由書を書き上げ、自分なりの言葉で表現できるよう、トレーニングを繰り返して面接に臨み、悔いが残らないものにしましょう。

プレゼンテーション

2016年06月3日

プレゼンテーションとは、聞き手に対して企画や情報を提示、提案して伝える技術です。
プレゼンテーションが成功するか否かは、内容と提示方法で決まります。
内容に価値があり、聞き手にメリットが生じるようなものを準備します。
内容に関しては、これまで幾度も述べてきましたが、ブレインストーミング、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングなどの思考スキルを活用すると、中味のしっかりしたものが作成できます。
それを聞き手に対してどのように伝えるかが重要です。
プレゼンテーションを成功に導く秘訣は、聞き手の立場に立つこと、聞き手の理解度を読み取ること、トレーニングを積んでおくことです。

 

聞き手の立場に立つとは、聞き手が理解しやすい範囲で準備をすることです。
つまり、情報をあれもこれもと、詰め込みすぎないことです。
多くの情報があると、焦点がぼけてしまい、プレゼンテーションが効果的に働きません。
制限時間内で伝えられる、聞き手にとって、価値があり、喜びを感じられる提示を考えます。

 

聞き手の理解度を読み取ることは、自分(プレゼンテーター)から聞き手、聞き手から自分の双方向性を持っているプレゼンテーションだからこそ、できることです。
聞き手は目の前にいるので、表情を見ることができます。
うなずいたり、首を傾げたりする聞き手の反応を見ながら、理解度を読み取ります。
言葉を言い換えて、納得してもらうようにわかりやすく説明します。
プロジェクターやレーザーポイント、小道具など、聞き手が理解しやすくするために使用します。
聞き手の理解度を読み取ることは、プレゼンテーションを上手に運ぶための一策です。

 

トレーニングを積むことで、プレゼンテーション能力が上達します。
楽器の演奏、スポーツ、自動車の運転などと同様に、練習を繰り返すことで技術が向上するのです。
アメリカでは、自分の意見を述べ、情報を伝える力のトレーニングとして、幼稚園から小学校低学年の間はショウ&テルを、それからプレゼンテーションを、発達段階に応じて、繰り返し学習しています。
人前で話すことに慣れ、どのような構成でプレゼンテーションを行えばよいのか、小さい時から回数をこなしてトレーニングしているのです。
その蓄積がプレゼンテーション能力に反映します。

 

テレビのコマーシャルや通販番組も、プレゼンテーションです。
視聴者の反応をリアルタイムで見ることができない一方通行のプレゼンテーションです。
一方通行、双方向性のいずれの場合も、プレゼンテーションは、伝える中味と伝え方で、首尾よくいくか、いかないかが決まります。
トレーニングを積んで、経験を増やし、プレゼンテーションの能力や技術を高めましょう。
聞き手が興味を持つような、聞き手の立場に立った、そして、内容が聞き手に理解されるようなプレゼンテーションを行うよう心がけましょう。

企画提案書

2016年06月1日

企画提案書は、主に、社会に出てから属する組織で要求されるスキルです。
どのような手順を踏めば、相手に響くものが提案できるのでしょうか。
相手の求めているものが何かを理解する、企画のメリットをわかりやすく説明する、その企画の実現可能性を示すことです。

 

まず、相手がどのような意図をもって、企画提案書を作成するように指示したかを推察します。
背景を見つめ、趣旨を正確に読み取ります。
企画提案書を出す相手の立場に立って考えるのです。
相手の求めているものが何かを理解します。

 

次に、企画提案書を採用することにより、生み出される新たな価値や魅力について書きます。
文字だけでなく、パワーポイント、画像などの利用は、視覚的にも相手の理解に、効果的に作用します。
どのようなメリットがあるかを、わかりやすく説明します。

 

最後は、その企画提案によるメリットの実現可能性を示します。業務の効率化、商品開発、社員旅行の企画など、事柄により、企画提案書の様式も構成も変わりますが、いずれも、目的は企画提案の採用と実現です。

 

ブレインストーミング、クリティカルシンキングなどの思考法を活用して、相手が望んでいる、相手に響く企画提案書を作成しましょう。

英語多読

2016年05月31日

当塾の英語教材は、イギリスの小学校教科書で使われている、オックスフォード・リーディング・ツリー(Oxford Reading Tree)を使用しています。
ORT(Oxford Reading Tree)は、イギリスの約80%以上の小学校で採用されている「国語」の教科書です。
最初は、文字はなく絵のみです。絵を見てどういう場面なのかを読み取ります。
次に、2〜3の単語が出てきます。絵と文字で楽しんでいきます。
徐々に単語数が増えていき、1文が長くなっていきます。
絵と文字が関連しているので、内容を想像することで、単語の意味を知らなくても、なんとなく単語の意味が推察できるようになっています。
同じ単語を繰り返して用いるので、忘却曲線に乗ることなく、記憶することができます。
単語として覚えるのではなく、文章で覚えるので、違う場面でその単語を見たとしても、応用することができやすくなります。
語彙数も増えますが、文法も自然と習得できます。

 

ORTは、「かわいいキャラクター達が登場するユーモアあふれる「オチ」がある短いお話が200話以上あり、すべてネイティブの子供たちが使う自然な英語でつづられています。10段階にレベル分けされ、頻繁に使う表現が繰り返し登場するため、英語学習用としても最適。物語はおもに主人公のキッパー少年とその家族や友達の日常生活を描いているので、まるで日本にいながらイギリスの家庭にホームステイしている気分も味わえます。」(Oxford University Pressより引用)という特徴を持っています。

 

英語を習得するには、英語を使用している国で体験するのが手っ取り早い方法ですが、日本にいながら習得するには、その国の文化や生活に密着した日常使う表現に、反復して触れることです。
ORTは、英語と米語の双方の発音でテキストを読み上げてくれる音声ペンを用いて、ネイティブの発音を、テキストの一部ですが聞くこともできます。
目で読み、耳で聞き、口で発話する。楽しみながら英語力が向上します。
自分の学習したいレベルからスタートできるORTは、英語をマスターするのに最適な教材です。

book01

ケースメソッド(Case method)

2016年05月28日

ケースメソッドは、事例を基にして、そこにある問題を発見、分析、整理して、最善の解決策を、複数で討議して導き出す教育方法です。
ハーバード・ビジネススクールや慶応義塾大学大学院などで採用されています。
日常生活において、あまり馴染みのない、専門知識が必要な、敷居の高い学習法の印象があります。
しかし、ケースメソッドの手法を用いて、最善の解決策を手に入れたい様々な問題が、身近にあります。
原子力発電、南海トラフ大地震に向けての対応、安楽死、高齢者社会における受け入れ施設不足、介護職人員不足などなどです。
ケースメソッドを行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか。
合意形成の方法や手順のプロセスを学べる、思考スキルがパワーアップする、傾聴力が鍛えられるというメリットがあります。

 

事例(ケース)は教育、医学、法学など分野によって違います。専門知識を必要とすることもあります。
しかし、どの事例でも共通に、事例を読み取り、問題を見つけ、分析、整理して、自分の考えを持つという、一連の作業を行います。
事例を読むだけの受け身ではなく、積極的に事例と向き合い、解決策を全体に提案し、討議を繰り返します。
自分の意思を伝え、相手から賛否両論の批評を受け、お互いの着地点を討議のなかで見つけ出していきます。
事例に対する最適解を導き出すまでの作業を通して、合意形成の方法や手順のプロセスを学ぶことができます。

 

事例において、自分の考えをまとめるには、ブレインストーミング、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングなどの思考法を利用します。
これらの思考法を反復活用することで、応用力がつき、それぞれの思考法がより磨かれて定着します。
思考スキルがパワーアップする効果があります。

 

ケースメソッドは、集団で行います。
相手の話をしっかり聞き、自分の意見を、根拠を示して説得できるように討議することを繰り返して、お互いの合意点を見いだしていきます。それが、最善の解決策を生み出す道程です。
自分の意見を説得力のあるものにするためにも、相手の話はしっかり聞くことが重要です。
話の内容を適切に理解すると、明確な反論もできます。
相手の提案が、より優れた解決策だと腑に落ちた場合は、自分の意見を引き下げる勇気も出せます。
集団討議の中で、傾聴力が鍛えられます。

 

解決策を模索する問題は次から次へと出てきます。
日常起きている出来事に対して、「私はこう思う」と思索を巡らす習慣がつけばいいですね。
問題解決能力の向上を図るには、ケースメソッドを活用することが有効です。

ディベート(Debate)

2016年05月27日

ディベートとは、ある特定のテーマについて、肯定側と否定側とに分かれて、第三者(観衆、審判などの聞き手)を論理的に説得する形で、互いに議論をたたかわすことをいいます。
検察側と弁護側の法廷での議論は裁判官を、アメリカ大統領選のテレビ討論はアメリカ国民を説得するために行われます。
これらは実社会で行われている実践ディベートです。
学校の授業や学校対抗の大会など、様々な教育目的のために行われるものは、教育ディベート(アカデミック・ディベート)と呼ばれています。
第三者であるジャッジに、自分たちの主張が、より優れていると判断してもらうように、論拠を示し、論理的に議論していきます。
教育ディベート(アカデミック・ディベート)は、ルールに則って行います。
このディベートのトレーニングで、どのようなスキルの向上が得られるのでしょうか。
自分の意見を、論拠を示して論理的に伝えるスキル、論拠となる資料を収集し、分類、整理して活用するスキル、多様で異なる視点、論点から理論を組み立てるスキルが、主な向上するスキルです。

 

ディベートは、コンストラクティブスピーチ(主張・論拠・結論)、リバトルスピーチ(相手チームの主張に対する反駁)、サマリスピーチ(主張・論拠・反駁・結論)の順に、肯定・否定側が、ルールで決められた時間を有効に使い議論します。
そのスピーチの原稿は、5段落エッセイと同様、型に沿って文章を組み立てておきます。
そうすることで、自分の意見を、論拠を示して論理的に伝えるスキルが獲得されます。

 

ディベートでは、論点を強力にサポートする、信頼できる資料をいかに提示することができるかが重要視されます。
ジャッジに自分の主張の優位性を示すことができるからです。
論文や文献、専門家の発言など、多くの新しくて客観性のある資料を収集するスキル、それらを分類、整理して活用するスキルが、ディベートのトレーニングを数重ねるごとに鍛えられます。

 

ディベートは、公平を期すため、ゲームの開始直前にジャンケンやくじによって肯定側に立つのか、否定側に立つかが決まります。
そのため、自分の本意とは関係なく、肯定・否定双方の立場で、説得力のある理論を準備する必要があります。
否定側の立場で理論を組み立てることで、肯定側の理論は、さらに堅固なものとして組み立てる必要に迫られます。一人問答です。
先入観を持たずに、多様で異なる視点、論点からものごとを考えるスキルが、肯定・否定、双方の立場で、批判的に思考を行い、議論を組み立てることで向上します。

 

自分の主張を、説得力を持って伝え、相手の主張もしっかり聞くことがディベートの根底にはあります。その上で、自分の意見を、論拠を示して論理的に伝える能力、論拠となる資料を収集し、分類、整理して活用する能力、多様で異なる視点、論点から理論を組み立てる能力を伸長させていきましょう。

クリティカルシンキング(Critical thinking)

2016年05月24日

クリティカルシンキングは批判的思考と訳されます。
物事に対して、多方面から見つめ、分析し、論理的に考え、客観的に批評し評価することで、より良い適切な結論を導き出す思考法です。
どうすれば、クリティカルシンキングを身につけることができるのでしょうか。
人は思い込みや先入観に基づき判断する傾向があることを自覚すること、批判的な視点で吟味すべき項目を知り、検証すること、異なる視点を持つためのトレーニングをすることで、クリティカルシンキングの技術を会得することができます。

 

思い込みや先入観に基づいた判断では、物事を健全に正しく見ることができません。
誰しも経験したことがあるでしょうが、人は思い込みを持つものです。
この世に生まれて生きる中での経験や体験を通して、自分なりの価値や判断基準ができます。
それらの枠組みの中で、物事を見るから思い込みや先入観が生じます。
例えば、レポートや論文を書く際に、自分が立てた仮説を証明するために、都合のよい資料や解釈ばかりを取り上げる。職場での数値目標達成のために、虚偽のデータや偏った意見を採用してしまう。一つの現象をとらえ、それが全体を示しているかのような、無理な一般化をしてしまうことなどが挙げられます。
自分が見たいように見てしまうと、客観性が失われ、論理が破綻してしまうことを自覚することが、批判的思考技術を身につける第一歩です。

 

次は、「問題の前提に誤りはないか」「根拠にする情報が少なすぎないか」「事実の羅列の中に自分の主観を混ぜ込んでいないか」など、批判的な視点で吟味すべき項目を知ることです。
「どうしてそうなるの?」「本当に意味があるの?」と、疑問を持ち、一つ一つ分析し検証していくことです。

 

そして、異なる視点を持つためのトレーニングをすることが肝心です。
物事を筋道立てて考えるだけでなく、あらゆる角度から物事を考え直してみるのです。
それは、自分の立てた論理の真偽を判定することに結びついていきます。
「クリティカルシンキング」の本を何冊読んだとしても、知識は得られますが、クリティカルシンキングの技術を自分のものにすることはできません。
バタフライの泳ぎ方を知識として理解していても、実際に泳ぐことは難しいものです。泳ぐトレーニングを繰り返して、泳ぐ技術がマスターできます。
トレーニングの代表として知られているのは「ディベート」です。
ひとつの命題に対して、肯定側、否定側の双方の立場に立ち、論理を組み立て、競い合うゲームは、そのルールの性質上、強制的に、人を異なる視点に立たせることができます。
異なる視点で見ると、物事に対しての見落としが少なくなります。より妥当な結論に辿り着きやすくなるのです。

 

「クリティカル」は日本語で「批判的」と訳されるため、否定的に批評するイメージがありますが、本来の意味は、健全で好意的に物事を正しく批評することだと捉えています。物事に対して、より良い結論を導き出すために、「なぜ?」「どうして?」の疑問を抱き、全ての論点に無理や誤りがないかチェックしてみましょう。そして、異なる視点を持つためのトレーニング方法である「ディベート」を通して、クリティカルシンキングの技術を会得しましょう。

クリエイティブシンキング(Creative thinking)

2016年05月23日

クリエイティブシンキングは創造的思考と訳されます。
創造的な考え方で、新しいものを生み出したり、問題を解決したりする思考法のことです。
新しいものを生み出すといっても、何もない「無」から「有」を創造するのではありません。
「既存のもの」を見つめなおし、それを何かと置き換えたり、組み合わせたりして、新しい機能や魅力を持つものを創造するのです。
情報収集のアンテナを張ること、思考ツールを使うこと、新しいもののアイデアが実現するまで熟考を重ね続けること、或いは問題が解決するまでその「問い」を持ち続けることが、クリエイティブシンキングには欠かせません。

 

情報収集のアンテナを張って、より多くの情報を入手することで、新しいものを生み出したり、問題を解決したりする方法の選択肢が広がります。
例えば、料理を作るとき、食材が、お米とお塩だけであったら、おにぎり、おかゆ、おもちと、作れる料理は限られてしまいます。
お肉、お魚、お野菜、果物に、お砂糖やお味噌などの調味料もあれば、作れる料理はぐんと広がります。
焼く、煮る、炒める、揚げるなどの調理方法、更には、日本料理、中華料理、フランス料理、イタリア料理などの知識もあれば、作れる料理は一層増えます。
食材を置き換えたり、調理方法と組み合わせたりして新しい料理を生み出すことができます。

 

思考ツールを使うと、より多くのアイデアを出すことができます。
ブレインストーミング(4月15日 ブログ)などの思考ツールは、ルールが決まっているので、そのルールに沿って考えていくことにより、思い込みや先入観から離れられ、より多くのアイデアを出すことができるのです。
例えば、「トマトとすいかの違いについて、20書き出しましょう」の「問い」に対しては、ブレインストーミングで、無理矢理でも20のアイデア(「答え」)を出すことによって、クリエイティブシンキングの思考力が鍛えられます。

 

新しいものを生み出したり、問題を解決したりすることは、短時間では成し得ません。「ローマは一日にして成らず」です。
時間をかけて、時に一休みしても、アイデアが形になるまで、あきらめないことです。
「問い」を持ち続けることです。その姿勢が、何よりも肝要なのです。

 

好奇心を原動力にして、問題解決までの障壁を一つ一つクリアしていきましょう。その過程もクリエイティブシンキングです。
アンテナを張って情報収集を行い、思考ツールを用いて分類、整理して、新しいものの創造や、問題解決のためにクリエイティブシンキングを活用しましょう。

志願理由書

2016年05月22日

中学校入試、高校入試、大学入試、就職試験においては志願理由書(志望理由書)(志望動機)の提出が必要です。
志願理由書は、試験当日にテーマのわかる小論文とは違います。
入試までに、時間をかけて準備することのできる試験問題なのです。
試験は、志願理由書を書く時からスタートしています。
志望校、志望学部、志望就職先をしっかり調査し、自己分析を遂行し、文章の内容も文字も丁寧に書き上げて完成させれば、より良い志願理由書を書くことができます。

 

まず、自分の入りたい学校や会社に関して、パンフレットなどの資料を集めます。
学校訪問、体験入学、企業訪問を行い、実際に見てみます。その時に、疑問点や知りたいことを質問します。
実際に在学、在社している方々の話を伺うのも一案です。
しっかりと、志望先を調査、研究します。

 

次に本格的な自己分析です。
漠然と、自分はこんな人間だと思っているだけでは不足です。
「私とは」に関して、頭の中にあることを、一度ありったけ書き出してみます。
それらを、仲間ごとに分類して、自分像をまとめます。
家族や友人など周囲の意見を聞くことも大切です。
自分では見えていない部分を教えてくれる意見に出会う可能性が大です。
自分をはっきり知り、理解すると、志望先のデータと自分自身を突き合わせて照合した時、足りない部分が見えたら、クリアするためにどうすればよいのかがわかります。

 

最後に、内容も文字も丁寧な志願理由書を書きます。
志望先を調査、研究したこと、自己分析して知った自分に基づいて、文章にしてまとめます。
志望動機、入学したら何を学び、卒業後はどうしたのいか(就職活動の場合は、志望動機、何故その会社を選んだのか、入社したら何をしたいのか、将来の構想や展望は何なのか)を自分の言葉で、心を込めて丁寧に書きます。
自分の経験や体験に沿った具体例を入れると、相手にも伝わりやすい、説得力を持ったものになります。
それは、志願理由書を書いてから時間が経過していても、面接で質問された時、明確に答えられることにつながります。
自筆の場合、見た目も重要です。
誤字脱字、筆圧のない薄い文字、極端に小さい文字、雑な文字は、採点者にとって読みにくいものです。
好印象を与える、丁寧な文字で書くことも忘れてはいけません。

 

志願理由書を書くまでには時間の余裕があります。
時間をたっぷりかけて、できるだけ多くの資料を集めて、色々な意見を聞きながら、遂行を重ねて、自分の志願理由書を完成させましょう。

論文

2016年05月19日

大学の最終学年では、必須単位に「卒業論文」があります。
大学入学後は、レポートや小論文が課せられます。それらを書いた後の集大成として、卒業論文を書くわけです。
では、「卒業論文」を書くまでに備えておくべきスキルとは何でしょうか。
それは、本を読む力をつけること、「問い」を立てる力をつけること、そして型をマスターして使いこなす力をつけることです。

 

本を読む力をつけるには、200~300ページの新書などを読み通せる力が必要です。
大学入試の小論文とは違い、入学後に書く論文は、自分の意見をサポートするための文献を読んで参考にしたり、引用したりするからです。
文献を出来る限り多く読んで、咀嚼して自分のものにすることで、本を読む力が備わります。
推理小説や恋愛小説のように、好きな分野の本を読むのとは読み方が違います。
2~3時間かけて、知識を得るために本を読みます。
読む力は一朝一夕では身につきません。
本との出会いは、家人の読み聞かせから始まります。
興味・関心のある本を読んで読書の喜びを知ることが、読む力をつける第一歩です。
小学生には小学生の、中学生には中学生の、年齢に応じた読書体験を重ねていきます。
その積み重ねが、文献の中から、論文に必要な情報を探し出す力を生みだします。
「読む」行為に費やした時間に比例して、読む力(リーディングスキル)をつけることができます。

 

「問い」を立てる力をつけるには、物事に対して、「何故?」「どうして?」と疑問を持ち続ける事が必要です。
それに対して「答え」を出すべくあれこれ思考を巡らせます。
論文は、「問い」がたたなければ書けません。
「問い」に対し、論拠を示して、論理的に明確な「答え」を主張する文章が論文です。
「問い」をたてるには、専攻分野に関する興味と、情報や知識が必要です。
多くのことを知っている方が、自分の主張することを、先人が書いたものとは違う視点から論述できるからです。
誰も知らない切り口から「問い」をたてることができるからです。
日頃から物事に対して好奇心や疑問を持ちましょう。
大学生になるまでに「問い」をたてることを習慣化し、意見を構築して論文を書く土台を固めましょう。

 

型をマスターして使いこなす力は、型にはめて書くことを繰り返すトレーニングで修得できます。
作文や読書感想文とは違います。
論文は、小論文の型が基本にあります。
自分の感想は書きません。事実のみを客観的に記します。
5段落エッセイ、小論文でも書いたように、まず、序論で自分の主張を述べ、本論で論拠を示し、結論で主張の正当性を論証します。
書くトレーニングを繰り返し、しっかり型を身につけておきましょう。

 

「卒業論文」は、大学での4年間の学びのまとめです。論文の書き方などのHow to本はたくさん出版されていますが、読んだからといってすぐに論文が書けるわけではありません。
より良い「卒業論文」を書くために、本を読む、「問い」をたてる、型をマスターして使いこなすスキルを身につけておくことが重要です。

小論文

2016年05月12日

大学は、「小論文」で受験者に何を求めているのでしょうか。
「小論文」を入試科目に課す大学が増えています。
大学により、試験時間や文字数には開きがあります。
出された課題について、自分の考えを、60分~120分の時間で、400字~1,200字の範囲で書きます。
大学は、中学校や高校で学んだこと、興味や関心を持ったことを、より深く研究するところです。
自分で問いをたて、答えを導くために、自ら主体的に取り組んでいくところです。
大学は、自分の考えをまとめて表現すること、相手に説得力を持って自分の考えを伝えること、文の体裁を整える力を求めています。

 

自分の考えをまとめて表現するには、まず、ブレインストーミングで、自分が頭に持っている全ての知識を書き出します。次に、それらの知識を分類し、整理して、優先順に並べ替えます。そして、自分の意見や考えをサポートするのに、最も重要なことから書き始めます。試験時間が決められています。参考資料も使えません。課題を的確に理解して、自分の考えをまとめて表現するには、常日頃から新聞や本などを読んで幅広い知識を蓄え、言葉を獲得しておくことが重要です。より多くの言葉を修得していることで、ブレインストーミングが豊かなものになるからです。

 

採点者は一度に数多くの小論文を採点するわけですから、採点者にとってわかりやすく、説得力のある文章であることが大切です。
冒頭に自分の論点を明確に提示することで、採点者はその論文が、どのような展開になっているのか推察しやすくなります。
次に続く本論で、自分の論点の根拠を述べます。自分の経験や体験に基づいたものを入れると、説得力が増し、効果的です。
最後に、自分の主張をもう一度述べて小論文を結びます。
このような手順で、序論、本論、結論を論述していくと、相手に説得力を持って自分の考えを伝える小論文が書けます。

 

文の体裁を整える力というのは、誤字、脱字がなく、不適切な接続詞の使い方や語順の誤りもない文章を書ける力ということです。それらの力も、小論文で試されているのです。

 

大学ではテーマを決めて、専門的に研究していきます。そして、その研究成果をレポートや論文という形で発表していきます。それらを書く力を受験生が身につけているか、小論文で確認しています。
受験当日までに、小論文を書くトレーニングを繰り返して、書く技術を鍛えておきましょう。そうすることで、大学が受験者に求めているものを達成することができます。

レポート

2016年05月10日

広辞苑によると、レポートとは「報告。報道。報告書。学術研究報告書」となっています。
口頭や文章で報告するレポートは、どう書けばいいのでしょうか。
課せられたレポートが、「何を求めているのか」を明確に理解することが出発点になります。
結論を考えてから書いていきます。レポートにはいろいろな種類があります。
牧野植物園の「すみれ・たんぽぽ展」では、市民の皆さんから送られてきたタンポポ調査用紙を分析して、高知県内の市町村別分布マップを作成していました。これをレポートとしてまとめるなら、送られてきた調査用紙がデータであり、それらが根拠になります。結果として、すみれ種類トップは香美市で24種類、タンポポ種類トップは大豊町と梼原町で8種類という報告書ができあがります。
「アサガオの一日」というレポートでは、時間の経過に従って定期的に観測して得た値を整理して、時系列に書いていきます。
警察官が窃盗犯を逮捕して、そのあらましをレポートするのも時系列になります。
「英米文学の比較」であれば、イギリスとアメリカの文学について、文献を引用したり参考にしたりして、自分の意見を述べていきます。

 

レポートのテーマによっては、「型」にはめ込んだ文章にすると、報告する相手に、自分の意見や考えを、はっきりと伝えることができます。
序論、本論、結論の5つの段落で構成されている5段落エッセイで、レポートを書いてみましょう。
序論冒頭で結論を述べる事から始めると、そのレポートはどういうことが書いてあるのか、相手がすぐに判断できます。
研究や調査などの報告書、学生が課題として提出する小論文、会社で新製品の企画を提案する企画書、新聞や放送などで実情や状況を報告・報道することなど、たくさんのレポートがあります。
どのレポートでも「何が求められているのか」を見誤らないことが大切です。

受験生・大学生・社会人に必要な「書く力」(5段落エッセイ)

2016年05月1日

受験生・大学生・社会人にとって必要な「書く力」には、「自分の意見や考えを、相手に説得力を持って伝える力」が含まれます。アメリカの教育では、その力をつけるために、説得力のあるエッセイ「Persuasive Essay」といわれる「5段落エッセイ」(Five Paragraph Essay)の指導が行われています。
小学4年生から書き始め、大学入学後も、それぞれの求められるレベルにおいて「5段落エッセイ」を書くトレーニングを受けています。
日本で「エッセイ」というと、自由なスタイル(型、形式)で書く随筆を思い浮かべますが、アメリカでは、決まったスタイル(型、形式)にはめ込んで、「自分の意見や考えを、相手に説得力を持って伝える文章」をいいます。「5段落エッセイ」は、私が書いていた「作文」や「読書感想文」と違い、型、形式が先に存在します。
「5段落エッセイ」は、1段落が序論(Introduction)、2,3,4段落が本論(Main Body)、5段落が結論(Conclusion)の5つの段落で構成されています。
大学受験で、大学入学後の学びにおいて、そして社会でも通用する「書く力」を、日本でも「5段落エッセイ」のトレーニングを通じ、子どもたちが身につけてほしいと思います。

 

3つの理由
2020年の大学入試から、小論文や記述式の問題がより重視される傾向になると言われています。「5段落エッセイ」は小論文の基本形となる文章です。入試当日に、さあ小論文を書きましょうと言って、すぐに書けるものではありません。日頃から、自分の意見を「5段落エッセイ」の形式に当てはめて書くトレーニングを積むことで、小論文の基本をしっかり修得することが重要です。

 

大学では専門的に学んだことを口頭、あるいはレポート・小論文・論文といった文章で表し、他者と共有することが求められます。作文や読書感想文とは異なる形式の「書く力」を、大学入学までに、アメリカの子どもたちと同様に身につけておくことが必要です。

 

社会に出た後も、企業や自分の所属する組織において、自分の意見を求められることがあると思います。企画書やプレゼンテーションで自身の考えを、同僚・上司そして顧客に表明するにもこの「書く力」が不可欠です。

 

「5段落エッセイ」の指導を通じて、受験生・大学生・社会人に必要な「書く力」(ライティングスキル)を、日本の子どもたちも身につけることができると思います。

 

「5段落エッセイ」につきましては、当ホッツ教育センター代表の松本輝彦が「5段落エッセイ指導で日本の教育が変わる!」の本で詳しく著しております。

読書感想文

2016年04月27日

中学・高校と、夏休みの宿題には読書感想文の宿題が必ずありました。
作文と同じように文章を書きますが、読書感想文を書く前提には、必ず本を読むことがあります。
かつては、本を読んで、感動したり、疑問に感じたり、共感したりの箇所に、所有している本なら線を引いたり、ページ上部を三角折にしたりして、感想文を書くときに、もう一度考えられるよう目印をつけていました。
この方法は、時が経って再読したときに、目印があるためにかえって読みにくく、その時の感じ方と、時を経た感じ方では、歳を重ねるに比例して、それなりに考え方も変化しているものだから、本に引かれた線が余計な汚れに見えたりします。
今は、付箋(ふせん)という便利な紙があるので重宝しています。
「多読術」著作者の松岡正剛さんは、鉛筆でも赤ボールペンでも、読みながら印をつけていく、マーキングすることを勧められています。
マーキングすると、読みに徹することができる、再読するときにやたらにスピードがあがるという2点の効用を述べられています。
これは、本をノートとみなし、すでに書き込みがしてあるノートを読みながら編集する、リデザインすることが、「マーキング読書法」の愉快なところだとおっしゃっています。
説得力がありますが、本をきれいにしておきたい気持ちが勝るので、活用に至っておりません。
読書感想文を書くと、反発や共感、同情や羨望、疑問や新しい気付きなど、何をどう感じたのか、自分の考えが目に見える形になります。
書くことで考えが深まります。人生観や世界観が広がっていくのではないでしょうか。

 

松岡正剛著の「多読術」は、冒頭から多読・少読・広読・狭読・粗読・精読・食読などの様々な読書方法の熟語が出てくるし、読書遍歴が始まった理由や、編集工学、キーブック、鳥の目と足の目など、多読をされている著者だからこその豊富な知識から繰り出される言葉に引き込まれ、一気に読み上げられる実に楽しい本です。一度、松岡さんの仕事場の5,6万冊ほどの蔵書を拝見したいものです。

作文

2016年04月25日

作文を書くことが好きですか?
小学校や中学校の国語の授業で、あるいは宿題で「作文」を幾度となく書いてきたことと思います。
小学校低学年の子どもたちが書いている、「先生、あのね。」から始まる作文集を見ると、かわいらしくて、頬が緩んでしまいます。最近では、就職試験でも作文が出されるところが増えてきているようです。

 

作文は自分の経験や体験を、主観的な文章にして表します。
作文のテーマが決まったら、まずは、それに関して知っていることや、関係がありそうなことを、頭の中からありったけ絞り出して、メモ書きをします。
次に、書きたいことと書けそうにないことを分けて、書く事柄を決めます。
その次に、書く事柄の順番を決めて、骨組みを構成します。
それから、寒い冬に衣服を何枚も重ね着した人のように、書きたい事柄をふくらませて具体的に書いていきます。
自分の意見や感想も述べます。

 

私はこれまでどんな題名の作文を書いてきたのか、とうの昔に忘却の彼方ですが、1つだけ覚えている作文があります。
それは「メダカ」です。自分で考えた題名ではなく、高校生だった国語の授業で、先生が私に指定した題名でした。私にとっては突飛な題名でした。何を書いて、原稿用紙に文字を埋めようかしらと考え始めた自分自身が今でも見えます。

 

書いた作文を読んでくれる相手が、友達、先生、あるいは就職試験を受けた会社の方であったりと色々なケースがあると思います。相手に合わせた言葉で表すと、自分の伝えたいことを理解してもらいやすくなります。言葉を多く知っていると、文を作りやすくなります。言葉を知るには読書が最良の方法です。表現方法も学ぶ事ができます。学んだことは作文で実践します。繰り返し書いていると、書くことに慣れてきます。
読む力(読書)と書く力(作文)は「やじろべい」のようですね。

絵本

2016年04月23日

私が大好きな本に「真夜中の図書館」(谷山浩子著)というのがあります。
1つめは谷山さんの文章、2つめはイラストレーターさんたちの挿絵、3つ目は童話や児童文学作家、小説家、作品についての簡潔な紹介、そしてそれら3つのものが緊密に結びついている三位一体感に夢中にさせられてしまいます。
帯に書かれている、「眠れない夜、心の扉を開いて、あなたの中の子どもに会いにいきませんか。」のキャッチコピーにいざなわれてしまいました。
私の中の子どもが読んだ絵本で、記憶が最も古いのは「六人のごうけつ」です。
私が幼稚園児だったころ、親が購入してくれていたものだと思います。
「キンダーブック」と言っていた気がします。
遥か遠くのものでもよく見える凄腕の猟師が、狙いを定めて鉄砲をかまえている絵が表紙だったと記憶しています。
当時の私は、どんな読後感を抱いたのでしょうか。この本が、グリム童話であったことも知りませんでした。今ならどんなふうに感じるのでしょうか。何十年かぶりに読んでみたいと希求しています。

童話

2016年04月21日

五台山展望台1階にある「雑貨ギャラリー PANORAMA」では、海外の絵本がたくさん展示、販売されています。
つい手に取って読みたくなるような心憎い絵本配置につられて、文庫本サイズほどの「Hansel and Gretel(ヘンゼルとグレーテル)」を、なつかしさも手伝ってめくってみました。
1973年に出版されたものでした。43年も前になります。
子どもの頃読んだのと同じで、継母によって森に捨てられたヘンゼルとグレーテルが、自分たちを煮て食べようとした魔女をやっつけて、魔女の宝を持ち帰り、継母はいなくなっていて、父親と3人で仲良く幸せに暮らすという内容でした。

 

グリム童話、アンデルセン童話、イソップ童話、ペローの童話、日本昔話、世界昔話などを、大人が読み聞かせてくれたり、自分で読んだりすることで、「言葉」を知るだけでなく、善悪の判断や因果応報、世の中の不条理や理不尽さも併せて知ってきました。
「大人もぞっとする初版グリム童話」は大人になって読んだのですが、確かに残酷で後味の悪いものでした。
飢饉で命が脅かされる当時の時代背景がこのような民間伝承を生んだのでしょう。
グリム兄弟が、幼年児童の情操に良くないと批判され、原点に忠実な話から、内容に変更を加えて現在知られているようなものになった過程に納得します。

 

矛盾がいっぱいありながらも、想像力が掻き立てられる童話を子どもの頃に読んで、子どもの頃に比すると知識が増え、消化力も高まった大人になって、民間伝承の原点に近い「大人もぞっとする初版グリム童話」を読んだことは、順番として良かったなと感じます。

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